怒られると物陰に隠れる、外から聞こえる自転車のブレーキの音にビクリと起き上がる、チャイムが鳴って先住犬が吠えても吠えない、ちょくちょくお風呂場に行ってじっとしてる、側溝の金網の上が歩けない。
時々思う、君はどこから来たんだい?と。
保護されたとき、首輪も何も身につけてなくて前の飼い主に関することは何もわからなかった。もちろん前の飼い主はそれが目的で全部外してから捨てたんだけど…
何年か誰かに呼ばれてた名前ではもう呼ばれなくなって、本当は今頃ガス室で窒息死してたはずの犬。
テトの個性を見つけると、誰か別の人がこんな風にこの犬の個性を知っていたんだ、と思う、この個性からその誰かが解らないのかともどかしい気持ちになる。
あたしはこの犬は一回死んだんだって思う。いや、むしろまだ生まれてないんだって思う。
どこから来たのか、誰に捨てられたのか、前の飼い主を恨んでも何にもならないから、プラスにもマイナスにもカウントしないで、今までも今もまだ繭でしかなくて、里親が見つかったときから生まれ直せばいいと思う。これから出会う飼い主の下で幸せになればいいと思う。唯一絶対の飼い主に大事にされて一生幸せに過ごしてほしいと思う。それだけが、動物を遺棄する人たちへの復讐だと思う。
話は変わって…